ズービン・メータが絶賛するバイオリニスト神尾真由子とは「特別に優れた若い才能がいる。その代表的存在が神尾真由子だ」
スイスのチューリヒに本拠を構える若手バイオリニストの神尾真由子の進境が著しい。2、3月の帰国時には、いずれも首席指揮者格のタクトを得て国内3つのオーケストラを相手に協奏曲のソリストを務め、「最近、強く興味を引かれるようになった」という近現代の作品からストラビンスキーに挑戦して喝采(かっさい)を浴び、十八番のチャイコフスキーでさらなる充実を聴かせたばかり。「作品が語るままに演奏するのが理想」という23歳は5、6月に日本の舞台に再登場し、巨匠が指揮する英国、ハンガリーの名門オーケストラとの共演に加え、リサイタル・ツアーも予定され、真骨頂を披露する。
神尾は昭和61年、大阪府豊中市生まれ。11歳でメニューイン国際バイオリンコンクールに優勝して早くから演奏活動を始め、平成19年のチャイコフスキー国際コンクールでは圧倒的な成績で優勝をさらって世界の注目を集めた。
ドイツのバイエルン州立歌劇場管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団をはじめとする第一級のオーケストラで現代の巨匠と共演を重ねる。一昨年の世界文化賞を受けた指揮者のズービン・メータは「特別に優れた若い才能がいる。その代表的存在が神尾真由子だ」と称賛を惜しまない。共演を重ねているメータとは、9月にミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のステージで再会し、定期演奏会とドイツでのツアーが予定されている。
「偉大な指揮者と共演させていただいていますが、どんな理想を思い描き、どの方向に向かって進んでいくのかを言葉を介してではなく、演奏そのものを通して理解しあえることに喜びを感じています。純粋に音楽だけで深く結びつき、美しい響きに浸っている瞬間を共有することは本当に幸せなことです」と神尾。
2月に日本フィルハーモニー交響楽団の九州演奏旅行で神尾とメンデルゾーンの協奏曲で5回の共演を行ったアレクサンドル・ラザレフは「あふれるような情熱と完ぺきなテクニックで音楽の本質をつかみ取っている」と、モスクワのボリショイ劇場の音楽監督を務めた大物も舌を巻く。
さらに神尾は「すばらしい演奏家は人生を心から楽しむ術にたけ、より豊かな時間を享受して音楽に奥行きを与えているようです。共演者が変わることで音楽の姿も変わり、それに触発されて今までにない自分を見つけることができます」と胸の内をのぞかせる。
「日本は帰る場所であると同時に、出かける場所ともなっています」と日本とスイスを行き来し、1年の半分を海外で過ごす。ワディム・レーピン、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任する樫本大進らトップ・バイオリニストを育てた名伯楽のザハール・ブロンに師事し、チューリヒ音楽院に籍を置く。
「スイスに住んで6年になります。周囲も私を特別に日本人という感じで接しないし、私自身も日本人であることを特に意識することがありません。いろいろな作品の世界に自身を置いて、表現するのにどこの出身であるか問題ではなく、いかに共感できるかが大切だと思います」
次の日本でのステージは5月12日、東京・渋谷のNHKホール。機能性が高い英国のオーケストラにあって筆頭格とされるBBC交響楽団との共演だ。チェコ生まれの指揮者、イルジー・ビェロフラーベクとシベリウスのバイオリン協奏曲を取り上げる。
「知的で緊密に音楽が構成され、静かな語り口に抑えがたい情熱が秘められた作品です。ビェロフラーベクさんの彫りの深い音楽づくりに応えられる演奏を目指したいと思います」
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★神尾 真由子(かみお まゆこ、1986年6月12日 - )は、大阪府豊中市出身のヴァイオリニストである。
経歴
日本での幼少時代
4歳の時からヴァイオリンを始め、里屋智佳子、小栗まち絵、工藤千博に師事。
1996年、第50回全日本学生音楽コンクール全国大会小学校の部において4年生で第1位を獲得し、1997年3月、オーチャードホールで、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団とラロ「スペイン交響曲」を共演して10歳でソリストとしてデビューした。
初めての国際コンクール出場とアメリカ留学
1998年、ユーディ・メニューイン国際コンクール・ジュニア部門で最年少の11歳で入賞した。
2000年、ニューヨークへ留学し、アスペン音楽祭、ジュリアード音楽院プレカレッジでドロシー・ディレイ、川崎雅夫に師事。そして、54か国から422人が参加したヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションで第1位を獲得。
2001年8月、サントリー(株)から1727年製ストラディヴァリウス(以前ヨーゼフ・ヨアヒムが所有、使用していたもの)を貸与されて弾き始めた。
帰国
2002年4月、日本に戻り、桐朋女子高等学校初の特待生となり、原田幸一郎に師事した。2002年4月にはアリオン賞を受賞、2003年には第13回出光音楽賞を受賞。また、18歳になる2004年にも国際コンクールに出場し、モンテ・カルロ・ヴァイオリン・マスターズで優勝、ダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリン・コンクールで第1位を獲得した。
現在
20歳を迎えた2006年、第5回モントリオール国際音楽コンクールに出場したが、第5位にとどまった。
2007年6月には、4年に1度開催される若手演奏家の登竜門である、第13回チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で優勝(ヴァイオリン部門での日本人の優勝は1990年の諏訪内晶子以来2人目)。
2008年、Sony BMG Masterworksと専属録音契約。
アスペンのマネージメントにより演奏活動を行っている。また、チューリッヒ音楽院でザハール・ブロンに師事し、研鑽を積んでいる。
2009年6月、アスペンによりファンクラブが設立された。
ディスコグラフィー
PRIMO(2008年6月4日)
パガニーニ:24のカプリース(2009年6月3日)